“紙器oriori”を開発したきっかけについて教えてください。

【田巻 茂(タマキシゲル)】
1867年創業 天ぷら 金万(長野県飯田市主税町27) 代表
飯田市で生まれ育ち、帝京大学卒業後に印刷会社に就職し、会社員時代に仕事の関係で大竹氏と出会う。
家業を継ぐため栃木での修行後、飯田に戻り先代(五代目)より指導を受ける。
その2年後に五代目の急逝により六代目として店を引き継ぎ、今に至る。
https://www.kidskomachi.net/?p=41680

【大竹 茂好(オオタケシゲヨシ)】
総武機械株式会社(千葉県東金市丹尾30-6)
代表取締役社長
千葉工業大学卒、新卒にて総武機械㈱入社。
2013年より現職、今に至る。
http://www.sobukikai.co.jp/

≪田巻≫
私は1867年に創業した「金万」の六代目になるのですが、実は私が継いでからしばらくした頃の2005年あたりからテイクアウトでの提供を始めていました。
その当時使用していた容器は、持ち帰りにかかる短い時間程度の保温に良いかなと思い、よく有名チェーンの牛丼店で使用されているような薄めの発泡スチロール素材で成形されたものを使用していたのですが、本当は「器」として料理を引き立てる事にも寄与してくれて保存性にも優れるような「最適」と感じられる容器は見当たりませんでした。

≪大竹≫
でも、発泡スチロールだと料理の水蒸気というか湿気で天ぷらの食感に影響が大きそうだよね。

≪田巻≫
その通りです。そこから3年ほど経過した頃、たまたま知り合いのウナギ屋さんと世間話をしていて、そこでたまたまテイクアウトの容器の悩みを話す機会があって、そうしたらそのウナギ屋さんが使用していた紙容器を紹介してもらって、それ以降は15年ほどその紙容器を使っていました。

≪大竹≫
ただ、2020年に新型コロナウィルスの流行が始まっちゃった・・・。

≪田巻≫
そうです。皆さんもご存知の通り、世間的にテイクアウトの需要が急激に高まってしまった影響で、「金万」でも使用していた紙容器も製造が追いつかずに「納期待ち」という状況が発生しました。それでも「金万」では以前から使用させていただいていた事もあり優先的に融通してくださっていたのですが、容器についての対策を少々考えた際に、ふと「そもそも、もっと理想に近づけるような容器はできないだろうか?」という想いを抱き始めました。

≪大竹≫
その時に他のものは探さなかったの?今はインターネットとかを使えば探しやすいだろうし。

≪田巻≫
そりゃもちろん最初は探しました(笑)。それこそ、私だけではなくインターネットが得意な子供達とかにも手伝ってもらったりして。ただ、全然見当たらなかったんです。それで、「無いなら、作れないのかなぁ?」と思って。

≪大竹≫
それでいきなり電話くれたってこと?

≪田巻≫
そうです(笑)。あ、いや、最初は取り扱いの業者さんとかにもちろん相談もしてみたのですが、なかなか難しいという返事しかいただけなくって、それでたまに連絡を取り合っていた大竹さんの事をふと思い出して電話で話をしてみたのです。 ほら、大竹さん、私が若い頃に千葉で一緒に仕事で絡んだときにも相談に乗ってくれたり、お互い違う会社でしたけど面倒見よかったりしたじゃないですか(笑)。まぁ、一緒に真剣に考えたり悩んだりしてくれる人が欲しかった訳ですよ(笑)。

≪大竹≫
それはいいけど、とは言え私、業務用の巨大で無骨なグラビア印刷機を製造している機械メーカーですからね(笑)。機械屋さんですよ、機械屋さん!
それにしても、案外大変だったよね(笑)。私も最初は「紙の箱」についての知識も何もないし、そもそも「紙箱」ってどう作るのかとか考えた事も無かったし。それで作っているのはどんな会社なのかとかを調べてみたり、試しに何種類かの箱を購入して研究してみたり、知り合いに聞いてみたり。

≪田巻≫
結局、半年以上も試行錯誤していましたよね(笑)。結果的に私が個人的に求めたかった様々な機能性も備える事ができましたし。蓋の内側に水蒸気を適度に吸収してくれるシートを加えられたことや保温性が高まったこともそうですし、もちろん料理を引き立てる演出としてもです。そして食を提供する側として絶対に大切な安全性についても今まで以上に勉強になりましたし、十分確保することができました。 そして、通常ですと弁当容器の箱は「組み立て後」の状態で納品されてくることが多いですが、こうして量が増えてくると容器の保管にも結構場所を取るし、棚のスペースだって限られてくるじゃないですか。だからシート状で必要な量だけ組み立てて使えるようにしてもらいたかったのです。

≪大竹≫
なるほどね。あ、あと大事な事は、紙容器なのに電子レンジで温め直すという事もできるようになった訳だよね!

≪田巻≫
そうです。私も以前に調べていたので、テイクアウトの紙容器は再生紙を使用している事がほとんどでしたし、食品容器として使うには「紙」というものは食品衛生法上ハードルが高い事も分かってきていました。なので、紙容器は電子レンジ不可なのは仕方がないと完全に諦めていました。

≪大竹≫
お客さんからの“紙器oriori”の評判は実際どうなの?

≪田巻≫
はい、実際、かなりいいです。というもの、この飯田という地域の特性なのかも知れませんが、「金万」のお客さまはほとんどがリピーターさんなのです。普段から日常的にご来店くださるお客様もいらっしゃれば、毎年の帰省の際に必ず1度はお寄りくださるお客様なんかもいたりするのですが、使い始めた当初は私も“紙器oriori”が完成して嬉しかったものですから、ほぼ全部のお客様に「紙箱、どうですか?」って聞きまくっていました(笑)。手前味噌ですがこの“紙器oriori(シキオリオリ)”というネーミングがとても気に入ってましてね、ちなみにその名付け親は私ではなく妻なのですが(笑)。商標としても正式に取得できましたし、最初は思い付きで始めた事ですが、こうして様々な形で認めていただけてきている事がとても嬉しいです。

≪大竹≫
なるほどね(笑)。確かにいいネーミングだよね。ところで、他にも“紙器oriori”を使い始めてくださっているお店も増えてきているよね?

≪田巻≫
ええ、つい先日も面白い話が聞けまして、この近所にある私の知り合いのお店なのですが、そのお店ではテイクアウトでもいわゆる普通のセトモノとかの食器を使っていたのです。昔のいわゆる「出前」みたいに(笑)。 そして、お客様がだいたい翌日とかにその食器を返しにきてくださるらしいのです。最初は「新しく紙容器を導入しましたので、有料にはなりますが、お選びいただけます」とご案内を始めたらしく、当初はそれでも「食器」が良いというお客様が9割以上だったらしいのです。しかし、実物をご覧いただくと「見た感じ、良さそうだね」という事で紙容器に移行されるお客様も増えてきて、しかも食器を返しに来なくて良いという事はやはり影響が大きく、今ではもう9割以上のお客様はこの“紙器oriori”を希望されているようです。

≪大竹≫
容器が演出する雰囲気というか、高級感を感じてもらえているから食器に負けていないということだね。

≪田巻≫
そう思います。飯田の特徴なのかも知れませんが、「食」に対するこだわりって皆さんとても強くって。

≪大竹≫
社会的にもプラスチックごみの削減がかなり意識されてきているから、それにも貢献できるよね。

≪田巻≫
はい、本当にその通りです。どうやら法律的には紙の使用量が50%以上であれば「紙容器」と言って良いらしいのですが、この“紙器oriori”にはレトルトパックの内側に使用されている東レの食品用ポリプロピレンフィルムを使用してもらっていますが、その薄さは約0.01mm程度です。結果的に使用量は0.1%にも満たないので、もしプラスチック容器を使用した場合と比較すると、99%以上もプラスチック使用量を削減できることになります。まさに“SDGs”に沿った取り組みですよ!
実際にSDGsについては「天ぷら 金万」が長野県登録企業として承認されましたしね!(https://nagano-sdgs.com/company/1069/profile/

≪大竹≫
あらためて思うけれど、田巻さんが1人のユーザーであるからこそ出来たこの“紙器oriori”だと思うんだよね。だからこそ周囲で「うちも使いたい」と言ってくれるお店が増えてきているのだろうと思うよ。そして田巻さんのキャラクターというか、その“熱量”が実現させたと思うよ(笑)。

≪田巻≫
いやいや、大竹さんが真剣に相談に乗ってくれたからこそですよ(笑)。 ちなみに、今はまだ形が1種類ですが、私の知り合いの飲食店仲間からも「もうちょっと大きいの欲しいなぁ」とかも言われているので、違う形状とかも含めていろいろ検討しているところです。

≪大竹≫
そうだね、さらに改良もできるかも知れないし、せっかく喜んでもらっている人達が多い訳だし、もっと良いものにしていきたいね。


新聞記事(掲載元:南信州新聞社 2021年12月5日)

新聞記事(掲載元:南信州新聞社 2021年12月5日


新聞記事(掲載元:南信州新聞社 2021年11月23日)